1987年3月15日にBBCのアンソロジー・ドラマシリーズ「Screen Two」の枠で放映されたテレビ映画「ゴーイング・ホーム／帰らざる兵士たち」（原題: Going Home）は、第一次世界大戦後のカナダ兵士たちの苦難を描いた力作である。この作品は、戦争の終結がもたらすはずの平和が、実際には新たな苦痛と混乱を生むというテーマを、歴史的事実に基づいて鋭く掘り下げている。監督のテレンス・ライアンと脚本家のクリストファー※請確認是否動物毛皮。動物毛皮製品屬於華盛頓條約条約牴觸物品，無法國際運送。・グリーンが手がけ、プロデューサーのレイ・マーシャルが支える本作は、キャストにニコラス・キャンベル、ミラン・チェイロフ、アルバート・シュルツ、ポール・マクスウェル、クライド・ポリットらを揃え、戦後の兵士たちの心理的・社会的葛藤を鮮やかに描き出している。放映当時、英国のテレビドラマとして注目を集めたこの作品は、今なお戦争の余波を考える上で貴重な視点を提供する。

物語の舞台は1919年のイギリス、ノースウェールズのキンメル・パーク・キャンプ。第一次世界大戦が終結した後も、数千人のカナダ兵が帰国を待ちわびながら、劣悪な環境に留め置かれている。主人公のブリル伍長（ニコラス・キャンベル）は、戦場で英雄的な功績を上げたベテラン兵士だが、戦争のトラウマを抱えつつ、故郷への渇望に苛まれる。兵士たちは戦後の訓練を強要され、ソールズベリー平原の泥濘で寒さに震えながら、無意味な軍規に縛られる。そこに追い打ちをかけるのが、スペイン風邪の大流行だ。戦場で生き延びた者たちが、次々と病に倒れ、死の影がキャンプを覆う。高級将校たちの無慈悲な命令と、帰国船の遅延が、兵士たちの不満を爆発させる。やがて、この抑圧された緊張は、歴史的に知られるキンメル・パーク反乱へと発展する。カナダ軍史上、暗い一頁として記録されたこの事件を、映画は克明に再現し、戦争の「終わり」が決して安堵をもたらさないことを強調する。

本作の最大の魅力は、こうした歴史的事実を基にしながら、単なるドキュメンタリー調ではなく、ドラマチックな人間ドラマとして昇華させている点にある。脚本のグリーンは、兵士たちの日常的な会話や微妙な感情の揺らぎを丁寧に織り込み、観客を物語の中に引き込む。たとえば、ブリル伍長が将校のパーティーに招待されるシーンは秀逸だ。戦友たちから英雄として送り出され、期待に胸を膨らませて赴く彼だが、そこでは階級差による屈辱的な扱いを受ける。この場面は、戦争がもたらした社会的な断絶を象徴的に描き、観客に強い衝撃を与える。クライマックスの反乱シーンも、暴力の爆発をただセンセーショナルに描くのではなく、兵士たちの絶望と怒りの蓄積として論理的に構築されている。監督ライアンの演出は、泥濘のキャンプや風邪の蔓延する病室をリアルに再現し、視覚的に圧倒的な緊張感を生み出している。低予算のテレビ映画ながら、撮影のクオリティは高く、戦後の荒廃した風景が物語のテーマを視覚的に支えている。

キャストのパフォーマンスも、この作品の成功を支える重要な要素だ。ニコラス・キャンベルはブリル伍長を、戦場帰りの荒々しさと内面的な脆さを絶妙に演じ分け、後の代表作『Da Vinci's Inquest』で知られる彼の若き日の才能を垣間見せる。アルバート・シュルツのバナーマン少佐は、傲慢さと無力感の狭間で苦悩する上官を立体的に描き、階級制度の矛盾を体現している。ミラン・チェイロフやポール・マクスウェル、クライド・ポリットら脇役も、兵士たちの多様なバックグラウンドを反映した演技で、集団的なドラマを豊かにしている。特に、クライド・ポリットの役柄は、風邪の犠牲者として描かれるシーンで、戦争の無常さを痛切に伝える。全体として、キャストのアンサンブルは、個人の物語を超えて、戦後社会の変革を予感させる集団心理を効果的に表現している。

テーマ的に見て、本作は戦争映画の枠を超え、社会批評としての深みを備えている。第一次世界大戦後の兵士たちが直面したのは、単なる帰国遅延ではなく、階級社会の崩壊と新たな感染症の脅威だった。スペイン風邪の描写は、現代の視点から見ると、パンデミック下での人間の脆弱さを予見的に描いているように感じられる。兵士たちは戦場で生き延びたものの、故郷に戻る過程で「変わった」存在となり、旧来の社会規範を破壊する力となる。この点で、1920年代の社会・政治的動乱を予感させる作品として、歴史的な意義が大きい。カナダ軍の暗部を暴露する内容ゆえ、当時の観客には衝撃的だっただろうが、今日では戦争の「後遺症」を考える上で、教育的な価値が高い。

一方で、批評的な観点からいくつかの弱点を指摘せざるを得ない。テレビ映画の制約からか、物語のスケールがやや狭く感じられ、反乱の全体像が十分に描かれていない部分がある。また、女性キャラクターの不在が目立ち、兵士たちの世界が男性中心に偏っている。これは歴史的事実に基づくものだが、多角的な視点が加われば、より豊かなドラマになったかもしれない。IMDbでの評価は8.3/10と高く、ユーザー・レビューでも「戦争後の兵士たちの苦難を鮮やかに描いた傑作」と絶賛されているが、批評家からの正式なレビューが少ないのは、テレビ放映の性質ゆえか。とはいえ、この作品は「Screen Two」シリーズの精神を体現し、商業映画では扱いにくいテーマを大胆に取り上げている。

総じて、「ゴーイング・ホーム／帰らざる兵士たち」は、戦争の終わりが新たな始まりの苦痛であることを教えてくれる。放映から30年以上経った今も、ウクライナや中東の紛争後の兵士たちを思い起こさせ、普遍的なメッセージを発信し続けている。戦争映画ファンや歴史好きには特におすすめの隠れた名作だ。もし機会があれば、ぜひ視聴して、その重厚なドラマを体感してほしい。